番外編:アギト 水と木の物語
※仮面ライダーアギト(TV 映画)の内容に触れます
※平成仮面ライダーの内容に若干ふれます
序:プロット
まずは我慢してこの拙作絵を見ていただきたい・・・
ごく普通の、仮面ライダーアギト(以下「アギト」)二次創作集合絵に見えますかね?
でもこの絵にはすごい秘密(え?)が隠されているのです~。
それはー
そう、めだたない尾室くんが隠れていた!
で は な く て、
直交座標状に水と木をクロスさせ、
名前(の漢字)にある「水」と「木」の要素数により配置したものなのです!
※「水」がらみの「川」「透」などは0.5加算、「木」がらみの「くさかんむり」なども0.5加算です。「魚」も水がらみなのですが(水魚の交わりといいますし)ちょっと無色のマナ(TCG的に)の位置に置いておきたかったので~
これは「仮面ライダーアギト」研究(?)史上はじめて(かどうかはしらんが)の「木の意味」を問いかける記事でございます。
1:水・・・死と再生
「津」上、葦原「涼」、「氷」「川」・・・・「仮面ライダーアギト」の主要人物に、水の要素が入った人が多い ということはよく言われてきましたが(と思うんですが)
例:仮面ライダーアギト 後半合評2 アギト設定考察・個々人の正義が激突! - 假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)
考察3・「水」にまつわるネーミング考
それは なぜ なのか。
「アギト」は「聖から俗へ」と説いたのがGMS様のこちらの記事で、
水の意味 - ものかきの繰り言2023
>そもそも翔一くん、浜辺に漂着したものなので、来訪神の性質を持っているのか!
他の記事には「水=死と再生」とも書かれており、
ああ、だからこの作品には水の名前の登場人物が多いのかと、とても納得させていただきました。
聖から俗へ、水辺にたどり着いた来訪神・・・(となると、えべっさん=恵比寿神? 翔一くんの笑顔はえべっさんなんだなと思うと、なんか納得できそうな。きっとレストランも商売繁盛だ)
ところで・・・東映特撮チャンネルでアギトが何回目かの配信を終了したのがちょうど1年半ほど前(2021年9月)なのですが、
このシーズンのとき自分は、「一度(以上)アギトはひととおりみてるなあ」と、見たり見なかったりだったんですよ。
見ないときでもGMS様のアギトの記事は読んでいたのですが、あるとき「深い深い水の底にて」というプロジェクトG4(この映画は未見だった)についての記事を読み、
たぶんその記事タイトルの字面で、気づいちゃったのだと思います。
「深」という時には、さんずい(水)だけじゃなくって、木もはいっているなあ、と。
深い深い水の底にて - ものかきの繰り言2023
2:水と木…?
さてここでウルトラマンネクサス(以下「ネクサス」)です。
ネクサスの登場人物の名前には
大きく分けると
- 秘密をつかさどるもの:水系(メモリーポリスの首藤沙耶・三沢 松永)
- 戦う人:木系(和倉・西条・平木・制服幹部の東郷、相馬、小柳 松永)
- 鳥系(姫矢 准=雉 憐=wren 針巣 尾白)
の3系統があることに、このころの私はすでに気が付いてた(気づいたきっかけはやはりGMS様の記事から)のですが、
じゃあ、ひょっとしたらアギトもその方法で系統づけられるのか? と
wikipediaのアギトの登場人物の項や
仮面ライダー公式サイトの登場人物図鑑を見たりして、人名の漢字に(部首として)「木」と「水」がどれだけ入っているかを調べてみたのです。
これは・・・興奮しましたねw このことに気づいているのは自分だけかも、という感情は恋に似ている(と内田樹先生が書いていたような)そうですが、
水の入った名前のキャラが主要人物(他は北條 木野を例外として脇役)・・・なのではなく
主要人物は、水系と木系に分かれる(両方の属性を持つものもいる)ということではないかと気づいたのですよ。
なるほど・・・ネクサスに先立つこと二年、登場人物の漢字の部首に意味を持たせていた作品があったわけです。
- アギトには水系と木系の人が居る
- 両方持つのは沢木と深海のみ
- 例外(どっちもまったく持たない)は風谷父と尾室。そう尾室・・・(T_T)(逆の意味で特権的なのかも)
3:水と木の違い
ではここで、水と木の違いについて考えてみます。これは、アギトという作品のテーマに直結してるんだと思いますよ。
・水は無個性、木には個性
水には(個体 液体 気体というフェイズは有っても)個性が無い(全にして一)
木には個性がある(一つとして同じものはない)
・水は平等 木には序列
ヒエラルキーとはちょっと違っていて、高い木の下に生える低い木とか、なんかそういう意味です。植生というか。
まあ、ほかにも違いはいろいろあると思うんですが、そのあたりの違いからか、次のような特徴が出てきます。
・みんなが同じ と これまでと同じ
・(他人を・・・あるいは自分を?)許せるか(水に流せるか) 許せないか
これは あかつき号生存者の水系・木系の人々の違いだったような(自信ない)
・聖と俗
人物集合絵の左(水)にいくほど聖(人間離れ)であり、右(木)に行くほど俗っぽい(人間くさい)人が集まっているなあという傾向があるでしょ?(ないかなあ) 大事なのは、どちらが優れているとか、上であるとか、そういう属性ではないということ。人間には聖も俗も必要です。水の人だけがアギトになるというわけでもないですし。
そして聖すぎる、というのも問題であり
上記のGMS様の記事にも書かれているように、
>禁断のシステム! 国家的陰謀! 非道な人体実験! 崇高な理念を掲げて
他者の命に豆粒ほどの価値も見出さない狂気!
深海理沙 という水3 木1という名前・・・
あんまし聖の方向に行き過ぎても、あんまし理念だけが高くっても、というわけですな・・・
※なお、プロジェクトG4は、人の名前の出し方が完璧です。水と木の要素に注目しながら見ても、この人は水の人か木の人か、っての(ネタバレ)を微妙に回避しつつ、適宜情報は提供している(深海の名札とか)
まあ、そんなわけで、
・狂気と正気
・理想(崇高な理念)と(普通の)生活(=身近な知恵)
この辺も違いとしてあらわれてきますね~
確かに「聖なる狂気」とは言うけど「俗なる狂気」なんて言い回しは聞いたことがない。
そして、普通の生活って大事ですよ~
ミヒャエル・エンデの「モモ」でも、Zeit ist Leben. と書かれてましたし。
英語だとTime is Life. ですね。
旧版の翻訳だと「時間とは生活なのです」
新版だと「時間とは、いのちそのものなのです」(このへんうろ覚え)
・・・なるほど、
美杉(みすぎ)とは 身過ぎ(生活)ということだったのか!
生活とは確かに「俗」の領域にあるものなのでしょう。
トレーディングカードゲーム風にいうならば、
水のマナ1である津上翔一(聖)が、
木のマナ1×2枚である美杉親子のもとに居候する(聖から俗へ)。
※聖と俗、どちらが上とか、優れているとか、ではないです。ここは間違っちゃいけないところです。
・抽象と具体
※ 具体を英語でconcreteという。コンクリート・レボルティオの「コンクリート」。あれは、具体的なヒーローたちが回転(回天)する話だったのか。
なお音楽においての「ミュージック・コンクレート」、美術においての「具体」は具体的ってのを少し外れて、特異な意味を持っています。
実際に作品を見てみると、これ抽象絵画じゃないかとも思えるのが面白いところです。
で、気持ちが重くなっちゃうんですが、やっぱりこれ↓は触れとかないといけないと思うのですよ。
4:ニュータイプの呪い
・ニュータイプ と オールドタイプ
人類全体がニュータイプになって感応しあうようになったら、そこに個性は存在し得るのだろうか(他人というものは存在するのだろうか)
※という問いが、ケイブンシャのガンダム大百科にあったような
それでもいい、違いを基(もとい)にして争いあい、滅んでしまうよりは・・・
と、考えて(あきらめて?)いいものなのでしょうか。
人類全体が液体になって溶け合うような未来。無個性の平等。
それは「死んだら仏様」的な涅槃(ニルヴァーナ)の世界、死後の世界のような気がします。
アギトのメインライター・井上敏樹さんは、
年代的にファーストガンダムの影響を、衝撃として受けとらざるをえなかったと思うのですが、それゆえに「ニュータイプの呪い」にとりつかれたのかもしれない。
一番呪われてしまったのは、富野監督そのひとだと思いますけど、ちょっとこの辺のことは省略させていただきます。重いので(というか自分の中でまとまらんし、気も乗らない・・・)。
で、どう呪いを解いたか、というと、
「ニュータイプでもオールドタイプでもいいじゃない、にんげんだもの(みつを)」
それは、人間なんていつまでたっても変わらないという諦念の裏返しなのかもしれませんが。実際、このコロナ渦という世界的な危機下においてさえ戦争をなくすことができてませんし・・・
ただ、ニュータイプだろうがオールドタイプだろうが、アギトだろうがアギトでなかろうが、食べるものは変わんないでしょ、って話。だからラストはレストラン。
5:五行 相生(そうしょう)
水生木(すいしょうもく)
木は水によって養われ、水がなければ木は枯れてしまう。
結局、水と木は仲良し、って話です。
この二つのタイプの人間は、対立しているのではなく、その違いを補い合ってよりよく生きていける。アギト登場人物のネーミングには、そんな希望が込められているのではないかと思いました(もちろん本編がそういう作りになっているからです)。
なお、何事にも例外はある、というよりわざと例外を作ったんじゃないか、と思われる名前もそれなりにあります(河野刑事は水2って感じじゃないし、あと「白河」とか)
名前がその人間をあらわすわけじゃないだろ、という声が聞こえてきそうな。
※この辺、ネクサスのほうは、例外なくきっちりと作っちゃってるんですけどね。
この件に関しては
『1917 命をかけた伝令』 - 習慣HIROSE
こちらの記事(ラストの展開にふれています)の
>方法が内容を凌駕してはならない。あくまでも方法は描こうとする内容に従属する。
という言葉が戒めになります。
人間のタイプを、漢字の構成要素によってあらわすというのは、あくまで方法である、と。
※ネクサスの場合、漢字に意味を織り込む方法が複雑で、漢字の名前そのものこそが「内容」って気がしますよ
6:メモ
オーパーツは「水」辺に漂着し、
最初の犠牲者「佐伯信彦」は、「木」の中に埋め込まれた。
佐伯 真魚 太一(北斗七星)・・・弘法大師・空海との関連性はあるか?
仮面ライダー龍騎では、
主人公二人の名は「城戸真司」=土 「秋山蓮」=木+火
ただ、意味や法則があるのかと言われれば、ちょっと分かんないですね
むしろ龍騎のほうに火のイメージがあるのですが・・・
いちおう 仮面ライダーに変身するものは 月火水木金土 どれかに関連ある漢字を名前に持ってはいます(「霧島」が苦しい)つうかこれらに全然関係ない漢字の名前を探すほうが難しいわ!
鏡ということで、左右対称に意味があるかな、とも思ったんですが、どうも法則を見つけられず。法則なんて作らない、という決意さえ感じられなくもない。
むしろ「城戸」=kid と、音のほうに注目するべきなのかもしれない。(「おとなになったら・・・」)
神崎(高見)士郎については、明確にV3・風見志郎との音の類似を指摘するべきだろう。父よ母よ妹よ。ラストのミラーモンスターがトンボだったのも、ああなるほど。
※昭和ライダーの1号・2号・V3・ライダーマン・X・アマゾン・ストロンガー・スカイライダー・スーパーワン・ゼクロスは、
平成のクウガからディケイドまでの10作にそれぞれ対応できなくもない。
龍騎はV3と対応している。龍騎のマスクの横スリットは、V3のマスク・口部分の横線と対応しているのだろうが、神崎士郎がミラーワールド(反転)の風見志郎ともいうべき存在なのかもしれないとは今気づいたっ!
555の主人公が「乾(いぬい)巧」と、「乾く」名前になってるのは(水の人との対比において)面白いところ。
(死は、灰になる(干からびる=水分が抜ける)という形で表される)
オルフェノクは、一度死を経由することや、その仲間の増やし方など、吸血鬼的なところがありまして(血の乾き) 木場はストレートに「牙」か?
それこそ仮面ライダーキバは吸血鬼(ちょっと違うけど)ハーフが主人公だったわけですが、
紅渡(くれない わたる)、血の赤のイメージ、そして人間とファンガイア二つの世界を渡る、だいぶん名前の付け方がストレートになりました。
順番前後しますが、
天の道を行き、総てを司る男!
これは名は体をあらわす好例。ちょっと昔っぽい登場人物名のつけ方ですね。
まあ自分が一番好きな名前の付け方は
「左 翔太郎」
これでWのどっち側がどっちの人か迷わずにすむよ!
(右のほうの本名もストレートだった)
というわけで、ネクサスの命名方法のルーツなんじゃないかとも思えるアギトの名前の話でした! う~時間かかった~
名前は水系、中身は木系(?)の ひろさわがお送りしました。